著作権の裁判例(「FC2アダルト」ストリーミング動画事件)

最近の裁判例を1件ご紹介します。
ストリーミング配信の場合の損害額が問題となった事案です。

東京地判平成28年4月21日(民事第46部。裁判長:長谷川浩二
平成27年(ワ)第13760号 損害賠償請求事件


【事案の概要】


原告は,映画,ビデオの映像製作,編集業務,販売等を営む株式会社です。本件で問題となった2つの動画の著作権を持っています。

被告がこの2つの動画データを「FC2アダルト」にアップしたところ、その行為が公衆送信権の侵害にあたると主張して、損害賠償金1475万4090円と遅延損害金の支払を求めました。

本件では、損害額をどのように計算するかが問題となりました。
原告が、1475万4090円という損害額を計算した根拠は次のとおりです。

114条1項に基づく主張


原告は、まず主位的に、著作権法114条1項に基づく損害を主張しました。

話の前提としてごく簡単に説明しておきますと、114条1項では、損害額はこのように計算されます。

損害=(公衆によって受信されることにより作成された著作物の複製物 [受信複製物の数量)×(もし侵害行為がなければ、著作権者等が販売することができた物の単位数量当たりの利益の額)

原告の主張の大枠は、以下の通りです。

・本件では動画はストリーミング配信されていたものの、視聴者のパソコンへのキャッシュの作成は複製にあたるから、114条1項の「受信複製物」にあたる。

・仮に「受信複製物」に当たらないとしても、FC2アダルトではダウンロードが容易なので、ストリーミングの再生回数はダウンロード数と同視できる。

・動画のうち1つの再生回数は13292回、もう1つは24539回。これに、原告のグループ企業の1つ「DMM.com」で配信する際の原告の利益額を考慮し、さらに弁護士費用も合わせると、1475万4090円となる。(なお利益額の数字等は、公開された判決文では省略されています)

114条3項に基づく主張


また、原告は予備的に、114条3項に基づく損害も主張しています。
114条3項では、損害額は、「著作権者が、著作権…の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額」となります。

原告は、取引先との間でコンテンツ提供基本契約を締結しており、その契約で原告が受ける許諾の対価の額をベースに計算して、損害額は約1475万4090円だと主張しました。(具体的な許諾の対価等の金額は、公開された判決文では省略されています)


【裁判所の判断】


結論としては、原告の請求のうち110万円と、遅延損害金の支払が認められました。
(なお訴訟費用については、10分の9が原告負担とされています。)

114条1項の主張について


まず、本件で114条1項の「受信複製物」が作成されたか否かについては、次のように述べて否定されました。
「受信複製物とは著作権等の侵害行為を組成する公衆送信が公衆によって受信されることにより作成された著作物又は実演等の複製物をいうところ(114条1項),本件においてはダウンロードを伴わないストリーミング配信が行われたにとどまり,本件著作物1又は2のデータを受信した者が当該映像を視聴した後はそのパソコン等に上記データは残らないというのであるから,受信複製物が作成されたとは認められないと解するのが相当である。」(下線:筆者)

また、本件では、ストリーミングの再生回数はダウンロードの再生回数とは同視されませんでした。
「証拠(甲19,20)及び弁論の全趣旨によれば,本件動画サイトにアップロードされた動画をダウンロードすることは不可能ではないが,そのためには特殊なソフトウェアを利用するなどの特別の手段を用いる必要があることが認められる。 以上によれば,本件著作物1及び2の本件動画サイトにおけるストリーミングによる動画の再生回数が受信複製物の数量に当たるということはできないし,これをダウンロードの回数と同視することもできない。」

114条3項に基づく主張について


裁判所は、次の3点を指摘して、動画1本あたりの損害額は50万円と結論づけました。

「①(原告の主張する)「再生数」の正確性を裏付ける証拠が何ら提出されていない上,全体の再生回数のうち有料のストリーミング配信の回数は,事柄の性質上,無料のサンプル動画の再生回数より大幅に少ないと考えられる。

②本件著作物1及び2のストリーミング配信の正規の価格は時期等によって変動するがおおむね1本当たり270~390円程度である。

③原告は自らが使用許諾をした場合の対価につき契約条項の大半を抹消した契約書の写しを提出するのみであり,現実にいかなる収入を得ていたかは明らかでない。

本件におけるこれらの事情を総合すれば,被告による本件著作物1及び2の公衆送信権の侵害に対して原告が著作権の行使につき受けるべき金銭の額は,それぞれ50万円とするのが相当である。」